勝負ラボ還元率ラボ / ケリー基準

ケリー基準の計算機
— 期待値がプラスでも、賭けすぎれば資金は減る

このページについて:確率と期待値の学習ツールです。 現金・賭け金・賞金・ポイント等を一切扱わず、換金・出金の仕組みもありません。 画面の数値はすべてシミュレーション上のものです。賭博の勧誘やオンラインカジノ等への誘導は一切行いません。
先に結論。ケリー基準は「勝てる賭け」を作る式ではありません。 すでに期待値がプラスである賭けに対して、資金の何割を張るのが最も速いかだけを決める式です。 期待値がマイナスなら、この式が返す答えは「賭けない(f=0)」です。 控除率のあるゲームはすべてここに該当します(→還元率ラボ)。
「期待値がプラスなら、大きく張るほど速く増える」——これは間違いです。 賭け金の比率を上げていくと、増える速さはある点で頭打ちになり、そこを越えるとマイナスに転じます。 このページでは、その折り返し点=ケリー比率 f* を式から導出し、 自分で入れた数字で「増える速さ」がどこでゼロになるかまで数値計算します。
目次
  1. なぜ「平均」ではなく「対数」で考えるのか
  2. 計算機
  3. この式が言っている、3つのこと
  4. 前提にしていること(当てはまらない場合)
  5. まとめと、次の1アクション

1. なぜ「平均」ではなく「対数」で考えるのか

1回の賭けで、確率 p で賭け金の b 倍を得て、確率 q = 1 − p で賭け金を失うとします。 手持ち資金のうち比率 f(0以上1以下)を毎回張ると、資金は勝てば 1 + bf 倍、負ければ 1 − f 倍になります。

ここで大事なのは、資金は足し算ではなく掛け算で動くということです。 1回目に2倍になり2回目に半分になったら、平均すれば +25% ですが、実際の手持ちは元に戻っているだけです。 掛け算で動くものの「長い目で見た速さ」を測るには、平均ではなく対数の平均を見る必要があります。

g(f) = p · ln(1 + b·f) + q · ln(1 − f) 1回あたりの対数成長率。n回続けたときの資金は、おおよそ en·g(f) 倍になる
対数成長率 g(f) の形 賭け金比率 f に対する成長率の曲線。f が 0 のとき 0、ケリー比率 f* で最大、そのおよそ2倍で再び 0 に戻り、その先はマイナスになる。 最大:f* g=0(≒2f*) 張りすぎ=減る 0 賭け金の比率 f → 成長率 g

この g(f) を最大にする f が、ケリー基準の答えです。 g(f)f で微分してゼロと置くと、途中式は次のようになります。

g′(f) = p·b / (1 + b·f) − q / (1 − f) = 0
⇒ p·b·(1 − f) = q·(1 + b·f)
f* = (b·p − q) / b 分子 b·p − q は、賭け金1あたりの期待利益(=エッジ)そのもの

分子がそのまま期待値になっているのが、この式のいちばん重要なところです。 1を賭けたときの期待収支は b·p − q なので、これが0以下、つまり期待値がマイナスかトントンなら f* は0以下になります。数式が「賭けるな」と答えている状態です。

2. 計算機

勝率と配当を入れると、ケリー比率・そのときの成長率・自分で決めた比率での成長率・ 成長率がちょうどゼロになる比率(ここを越えると長期では減る)を計算します。

「n回後の資金(中央値の目安)」は en·g(f) です。 平均値ではありません。平均は一部の極端に大きい結果に引っ張られるので、 「自分に起きやすい結果」を見たいときは中央値側で見るほうが実態に近くなります。

3. この式が言っている、3つのこと

① 期待値がマイナスなら、最適な賭け金はゼロ

控除率のあるゲームでは b·p − q が必ずマイナスになります。 たとえばヨーロピアンルーレットの赤に張ると p = 18/37b = 1 なので、 エッジは 18/37 − 19/37 = −1/37 ≒ −2.70%(※このページ内の数え上げによる実測値)。f* はマイナスになり、 「最適な行動は張らないこと」以外の答えが出ません。 賭け金の増やし方をどう工夫しても、この符号は変わりません(→ベッティングシステム検証室で5種類を実測しています)。

② 「2倍張る」と、増えるはずのものが増えなくなる

成長率 g(f) は上に凸の形をしていて、f = 0 でゼロ、f = f* で最大、 そしてその先でもう一度ゼロに戻ります。上の計算機の「成長率がゼロになる比率」がその点です。 イーブンマネー(b = 1)のときは、この点がおよそ 2·f* になります。 ケリーの2倍を張ると、勝てる賭けなのに長期では増えないということです。 それ以上張れば、期待値がプラスのまま資金は減っていきます。

③ だから実務では「半分」にする

成長率の曲線は f* の近くで平らです。f* の半分しか張らなくても、 成長率は最大値の およそ4分の3 が残ります(計算機で f を半分にして確かめられます)。 一方で、資金が途中で大きく凹む幅は目に見えて小さくなります。 速さをわずかに手放して、揺れを大きく減らす——これがハーフケリーと呼ばれる運用です。

数字を1つ入れてみる

勝率55%・イーブンマネー(b = 1)で考えます。エッジは 1×0.55 − 0.45 = 0.10、 つまり1を賭けるたびに平均 0.10 だけ増える、はっきり有利な賭けです。ケリー比率は 0.10 / 1 = 10%。 このとき1回あたりの成長率は約 0.00501 で、100回続ければ資金はおよそ 1.65 倍です(※上の計算機で実測)。

張る比率 f1回あたりの成長率 g(f)最大値に対する割合100回後の資金
5%(ハーフケリー)+0.00375約75%約1.45倍
10%(ケリー f*)+0.00501100%(最大)約1.65倍
20%(ケリーの2倍)−0.000140%約0.99倍
40%−0.03200約0.04倍

※ 表の値は p=55%・b=1 を上の計算機に入れて得た実測値です(2026年9月時点のこのページの実装。小数第5位で丸め)。横にスクロールできます。

張る比率ごとの成長率 勝率55%・配当1倍のとき、資金の5%・10%・20%・40%を張った場合の1回あたり成長率を比べた棒グラフ。10%が最大で、20%はほぼゼロ、40%は大きくマイナス。 0 +0.0038 +0.0050 −0.0001 −0.0320 5% 10% 20% 40%

勝率も配当も一切変えていないのに、賭け金の比率を 10% から 40% に上げただけで、 増える賭けが減る賭けに変わります。上の計算機に同じ数字を入れれば、この4行はそのまま再現できます。

4. このページで前提にしていること(=当てはまらない場合)

このページの数式はすべてこの画面内で導出しています(外部の出典に依存していません)。 成長率がゼロになる比率は、閉じた式ではなく二分法による数値解として計算しています。

5. まとめ

次の1アクション

上の計算機で、まず自分がふだん張っている比率を f に入れて試してみてください。 成長率が0以下と出たら、勝率や配当ではなく賭け金の大きさだけが原因です。 控除率のあるゲームでそもそもエッジが取れるのかは、還元率ラボで種目別に確認できます。