賭け金 b、オッズ o倍(元返し込み)、的中率 p とすると、1回の賭けの期待収支はこうなります。
ここから、賭け方によらず必ずこうなります。
右辺に「賭け金をどう決めたか」はどこにも出てきません。マーチンゲール法だろうがココモ法だろうが定額だろうが、 期待値は「賭けた総額 × 控除率」から動かないということです。 資金管理が変えられるのは損益のばらつきの形(=どういう負け方をするか)だけです。
カジノの赤/黒は常に2.0倍です。公営競技はレースごとにオッズが変わります。 そしてマーチンゲール法の性質は、このオッズだけで決まります。 損失を1回の的中で取り返そうとすると、賭け金はこの倍率で増えていきます。
| オッズ | 賭け金の増え方 | 5連敗目に必要な額 | 5連敗までの累計投入 | 8連敗目に必要な額 |
|---|---|---|---|---|
| 1.2倍(堅い複勝) | 6.00倍 | 6,609,600 | 7,930,500 | 1,427,673,600 |
| 1.5倍(複勝) | 3.00倍 | 162,000 | 242,000 | 4,374,000 |
| 2.0倍(カジノの赤/黒と同じ) | 2.00倍 | 16,000 | 31,000 | 128,000 |
| 2.5倍 | 1.67倍 | 5,500 | 12,700 | 25,500 |
| 3.0倍(単勝の中心) | 1.50倍 | 2,700 | 7,000 | 9,000 |
| 5.0倍 | 1.25倍 | 700 | 2,500 | 1,400 |
| 10.0倍 | 1.11倍 | 200 | 1,000 | 300 |
ここが直感と正反対のところです。 「複勝は当たりやすいから安全」と言われますが、 当たりやすい(=オッズが低い)馬券ほど、マーチンゲール法の賭け金は速く増えます。 複勝1.5倍なら1回ごとに3倍。5連敗で16万円、8連敗で437万円が必要になります。 逆に10倍の馬券なら1回ごとに1.11倍しか増えません——連敗しやすい代わりに、賭け金は静かです。
ネット上の「マーチンゲール法」の説明の多くは単純な倍賭け(1,000→2,000→4,000…)です。 これはオッズ2.0倍を前提にした計算で、公営競技の多くの買い目では成立しません。 n連敗のあとに的中したときの純益はこうなります。
| オッズ | 連敗なし | 1連敗後 | 2連敗後 | 4連敗後 | 6連敗後 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.1倍 | +100 | −800 | −2,600 | −13,400 | −56,600 |
| 1.5倍 | +500 | ±0 | −1,000 | −7,000 | −31,000 |
| 1.8倍 | +800 | +600 | +200 | −2,200 | −11,800 |
| 2.0倍 | +1,000 | +1,000 | +1,000 | +1,000 | +1,000 |
| 3.0倍 | +2,000 | +3,000 | +5,000 | +17,000 | +65,000 |
複勝1.5倍で倍賭けをすると、1連敗後に的中しても利益はゼロ、2連敗後に的中したら1,000円のマイナスです。 「1回当たれば取り返せる」という前提そのものが、オッズ2.0倍未満では成立していません。 下のシミュレーターで「マーチンゲール法:単純な倍賭け」と「損失回収型」を切り替えると、この違いをそのまま観察できます。
カジノにはテーブル上限があり、賭け金を倍にし続けるとそこで必ず止まります。 公営競技には店側の上限がありません。止めるものが自分しかない、ということです。 これは「上限がないから有利」ではなく、破綻が「上限で止まる」ではなく「資金がゼロになる」形で来るという意味です。 シミュレーターの「1レースに賭ける上限」は、自分で決める歯止めとして用意しています。
1レースずつは手で進みます(自動再生は任意で、結果が勝手に流れることはありません)。 一括試行は同じ設定を最大5,000セッション回して、破綻率・収支の分布・回収率・期待値との一致を表示します。 乱数シードを入れれば同じ結果を何度でも再現できます。
券種=JRA単勝/オッズ3.0/損失回収型マーチンゲール/初期資金10万円/基準1,000円/1レース上限50,000円/100レース。 一括試行を回すと、プラスで終わるセッションの割合は高く出ます。それでも合計収支は大きなマイナスで、 回収率は払戻率80%の近くに落ち着きます。
的中率は53%まで上がるのに、破綻はむしろ増えます。賭け金が1回ごとに3倍になるからです。 「当たりやすさ」は資金の安全性を意味しません。
今度は逆に、賭け金はほとんど増えません(1.03倍)。その代わり的中率が1.8%なので、 20連敗が69%の確率で起きます。マーチンゲール法は「賭け金の爆発」か「延々と当たらない」のどちらかに必ずぶつかります。
券種を「控除率0%の対照実験」にすると、平均収支はほぼ0になります。 負ける原因は資金管理の方法ではなく控除率です。 そのうえで破綻率は0になりません。資金が有限である限り、賭け金を増やし続ける方法はいつか止まります。
下のシミュレーターで実際に回した結果です。券種=JRA単勝/オッズ3.0倍(的中率26.67%)/初期資金10万円/
基準1,000円/1レース上限50,000円/100レース/5,000セッション/乱数シード 20260902。
同じ数字を入れれば、この表はそのまま再現できます。
| 資金管理の方法 | 平均の総ベット額 | 平均収支(実測) | 理論値 −20%×総ベット額 | プラス率 | 続行不能 | 回収率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 定額(毎回1,000円) | 100,000 | −20,044 | −20,000 | 6.4% | 0.0% | 79.96% |
| 単純な倍賭け | 124,693 | −23,785 | −24,939 | 22.1% | 99.8% | 80.93% |
| 損失回収型マーチンゲール | 182,341 | −36,474 | −36,468 | 38.6% | 59.4% | 80.00% |
| ココモ法 | 196,929 | −40,904 | −39,386 | 15.6% | 84.3% | 79.23% |
| 資金比例(手元の5%) | 320,633 | −63,967 | −64,127 | 3.9% | 0.0% | 80.05% |
| ダランベール法 | 410,996 | −83,920 | −82,199 | 2.5% | 97.0% | 79.58% |
この表の読みどころは3つあります。
ついでに、プラス率と平均収支が逆向きに動いていることにも注目してください。 損失回収型はプラス率38.6%と最も「勝てているように見える」のに、平均収支は定額の1.8倍のマイナスです。 勝った回数は、勝っているかどうかの証拠になりません。
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ここで扱っているのは「確率と期待値」の話なので、その背景を扱った定番書を挙げます。
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