基準額を b とすると、n連敗した直後の状態はこうなります。
つまり「勝てば必ず +b」は正しい。ここに嘘はありません。 嘘があるのは「だから勝つまで続ければいい」という続きの部分です。
連敗を n 回まで耐えるには、賭け金の合計 b×(2ⁿ⁺¹−1) を用意しておく必要があります。
確率はヨーロピアンルーレットの赤/黒(勝率 18/37 ≒ 48.65%)で計算しています。
| 何回目 | その回の賭け金 | そこまでの累計投入 | 直前までの累計損失 | そこまで全敗する確率 |
|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 1,000 | 1,000 | 0 | 100% |
| 2回目 | 2,000 | 3,000 | 1,000 | 51.35% |
| 3回目 | 4,000 | 7,000 | 3,000 | 26.37% |
| 4回目 | 8,000 | 15,000 | 7,000 | 13.54% |
| 5回目 | 16,000 | 31,000 | 15,000 | 6.95% |
| 6回目 | 32,000 | 63,000 | 31,000 | 3.57% |
| 7回目 | 64,000 | 127,000 | 63,000 | 1.83% |
| 8回目 | 128,000 | 255,000 | 127,000 | 0.94% |
| 9回目 | 256,000 | 511,000 | 255,000 | 0.48% |
| 10回目 | 512,000 | 1,023,000 | 511,000 | 0.25% |
| 11回目 | 1,024,000 | 2,047,000 | 1,023,000 | 0.13% |
| 12回目 | 2,048,000 | 4,095,000 | 2,047,000 | 0.065% |
ここで見てほしいのは右端の列と左から2列目の対比です。 1,000円を取りに行くために、11回目には100万円を賭けている。 そしてその状況は「0.13%しか起きない」ほど珍しくもありません。 0.13% は、だいたい784回に1回です。1晩に何十サイクルも回せば、すぐに出会う頻度です。
| 連敗数 | 確率 | おおよその頻度 |
|---|---|---|
| 5連敗 | 3.571% | 28サイクルに1回 |
| 6連敗 | 1.834% | 55サイクルに1回 |
| 7連敗 | 0.942% | 106サイクルに1回 |
| 8連敗 | 0.484% | 207サイクルに1回 |
| 10連敗 | 0.128% | 784サイクルに1回 |
| 12連敗 | 0.034% | 2,974サイクルに1回 |
| 15連敗 | 0.0046% | 21,965サイクルに1回 |
具体的な設定で見ます。初期資金10万円・基準額1,000円・テーブル上限20,000円。 このとき賭けられるのは 1,000 → 2,000 → 4,000 → 8,000 → 16,000 の5回までです。 6回目に必要な32,000円はテーブル上限を超えるので、5連敗した時点で続行不能になります。
| 1サイクルで破綻する確率 | 3.571% |
| 1サイクルの期待収支 | −142.6 円 |
| 1サイクルの期待総ベット額 | 5,277.7 円 |
| −控除率 2.70% × 5,277.7 円 | −142.6 円(=上と完全一致) |
| 50サイクル続けて破綻しない確率 | 16.2% |
| 100サイクル続けて破綻しない確率 | 2.6% |
1サイクルの96.4%は「+1,000円」で終わります。だから体感としては「ほぼ勝てる」。 しかし残り3.6%で31,000円を失うので、平均すると1サイクルあたり142.6円のマイナスです。 そして100サイクル——1晩でも十分到達する回数——を回せば、97.4%の人が破綻します。
あまり知られていない罠です。バカラのバンカーは配当が0.95倍(5%のコミッション)です。 n連敗後に勝ったときの純益を計算すると、こうなります。
| 状況 | 勝ったときの純益(基準額1,000円) |
|---|---|
| 連敗なしで勝つ | +950 円 |
| 2連敗後に勝つ | +800 円 |
| 4連敗後に勝つ | +200 円 |
| 5連敗後に勝つ | −600 円 |
| 6連敗後に勝つ | −2,200 円 |
| 8連敗後に勝つ | −11,800 円 |
5連敗より深いところでは、勝っても損失が残ります。 「1回勝てば取り返せる」という前提そのものが、コミッションのあるゲームでは成立していません。 下のシミュレーターでゲームを「バカラ バンカー」に変えると、この挙動をそのまま観察できます。
1回プレイは1ゲームずつ手で進みます(自動再生は任意で、結果が勝手に流れることはありません)。 一括試行は同じ設定を最大5,000セッション回して、破産確率・収支の分布・期待値との一致を表示します。 乱数シードを入れれば同じ結果を何度でも再現できます。
初期値のまま(10万円/1,000円/上限20,000円/200ゲーム)で一括試行を実行してください。 プラスで終わるセッションの割合は高く出ます。それでも合計収支は大きなマイナスです。 ヒストグラムを見ると、右側に小さな山がびっしり、左側にぽつんと巨大な損失という形になっています。 これがマーチンゲール法の損益の形です。
テーブル上限を 100000000(1億)にして一括試行します。破綻率は下がりますが、 1回の破綻で失う額が桁違いになるため、合計収支は改善しません。 上限を外しても勝てるようにならない——このことが「上限さえなければ」という反論への答えです。
ゲームを「公正なコイン(控除率0%)」に変えて一括試行します。平均収支はほぼ0になります。 負ける原因はマーチンゲール法ではなく控除率です。 そのうえで破綻率は0になりません。資金とテーブル上限が有限である限り、賭け金を倍にし続ける方法はいつか止まります。
「資金が無限」「賭け金に上限がない」「時間も無限」の3つがすべて成り立てば、確率1で +b を得ます。 これは数学的には正しいのですが、3つとも現実には存在しません。 有限の資金でこの戦略を続けた場合、破産する確率は試行を重ねるほど1に近づきます。
いいえ。ルーレットに記憶はありません。10連敗した直後でも、次に赤が出る確率は 18/37 のままです (ギャンブラーの誤謬)。マーチンゲール法が有効に見える理由の多くは、この錯覚から来ています。
ベット上限はもともとどのテーブルにも設定されているもので、特定の賭け方を狙って作られたものではありません。 そして上限があるだけでこの方法は成立しなくなります。わざわざ禁止する必要がない、というのが実際のところです。