基準額を b、現在の段階を n(負けるたびに+1、勝つたびに−1、下限は0)とすると:
| 連敗数 | 次の賭け金 | 累計損失 | (参考)マーチンゲール法の次の賭け金 |
|---|---|---|---|
| 5連敗 | 6,000 | 15,000 | 32,000 |
| 10連敗 | 11,000 | 55,000 | 1,024,000 |
| 20連敗 | 21,000 | 210,000 | 1,048,576,000 |
| 30連敗 | 31,000 | 465,000 | (天文学的) |
ダランベール法の説明にはたいてい「勝ちと負けはいずれ同じくらいの回数になるから、 負けた時に賭け金を増やしておけば取り返せる」という趣旨の理屈が添えられています。これは誤りです。
ルーレットにもコイントスにも記憶はありません。10連敗した直後に赤が出る確率は、1回目とまったく同じ 18/37 です。 「回数が均される」ように見えるのは比率の話であって(大数の法則)、差が均されるわけではありません。 むしろ回数を重ねるほど、勝ち数と負け数の差は平均的に広がっていきます。 この錯覚はギャンブラーの誤謬として知られています。
ダランベール法の紹介でよく見かける主張です。全パターンを数え上げて確かめました。
賭け金を基準額より下げられる版(理論版)では、この主張は正しく成り立ちます。
勝ち数と負け数が同じ n ゲームなら、利益はつねに n ÷ 2 単位です(4・6・8・10ゲームで全パターンを確認)。
ただしこの版では、勝ちが続くと賭け金が基準額を下回り、やがてマイナスの額を賭けることになります。現実には不可能です。
賭け金を基準額より下げない版(実用版・このシミュレーターの実装)では、主張は成り立ちません。 8ゲームで勝ち4・負け4の全70パターンを数え上げると、結果は −6/−2/+1/+3/+4 単位に分かれます。
| 勝敗の並び(勝ち4・負け4) | 実用版の収支 |
|---|---|
| 勝 勝 勝 勝 負 負 負 負 | −6 単位 |
| 負 勝 負 勝 負 勝 負 勝 | +4 単位 |
同じ「勝ち4・負け4」でも、順番によって収支が10単位も変わります。 「勝率が5割に戻れば利益」という説明は、この時点で崩れています。
ダランベール法は賭け金が急激には増えないので、テーブル上限にはなかなか到達しません。 代わりに資金がじわじわ削られて底をつきます。 次の数字は、下のシミュレーターで乱数シードに 20260902、セッション数に 5,000 を入れれば同じ結果が再現できます (ヨーロピアンルーレット赤黒/初期資金100,000/基準額1,000/最大200ゲーム)。
| 設定 | 破綻率 | プラスで終了 | 平均収支 | 収支の中央値 | 最悪 | 平均総ベット額 | 理論値 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| テーブル上限 20,000円 | 56.5% | 39.0% | −25,051 | −86,000 | −100,000 | 875,156 | −23,653 |
| 目標 +5,000円で切り上げ | 7.8% | 92.2% | −2,059 | +5,000 | −100,000 | 84,129 | −2,274 |
そして平均収支 −25,051円 は、理論値「−控除率2.70% × 平均総ベット額875,156円 = −23,653円」とほぼ一致します。 賭け金を1単位ずつ動かすという工夫は、期待値に何も影響していません。
1回プレイは1ゲームずつ手で進みます(自動再生は任意で、結果が勝手に流れることはありません)。 一括試行は同じ設定を最大5,000セッション回します。乱数シードを入れれば同じ結果を何度でも再現できます。
初期設定のまま一括試行してください。平均総ベット額が87万円まで膨らみます。 初期資金10万円しかないのに、200ゲームで87万円を賭けている——これが「賭け金が小さいから安全」の実態です。 期待損失は「賭けた総額 × 控除率」なので、長く賭けるほど確実に削られます。
「利益目標に届いたらやめる」に 5000 を入れて一括試行してください。 プラス終了は92.2%まで上がります。そのうえで表の「合計収支」を見てください。マイナスです。
ゲームを「公正なコイン(控除率0%)」に変えると、平均収支はほぼ0になります。 負ける原因はダランベール法ではなく控除率です。