「マーチンゲール法なら理論上は負けない」「モンテカルロ法は数列で管理するから堅実」—— こうした説明は、資金が無限にあり、テーブルに上限がないという現実には存在しない前提の上でだけ成り立ちます。 このシミュレーターは、初期資金・ベース賭け金・テーブル上限・ゲームの控除率を自分で入れて、 1回プレイで1ゲームずつ確かめ、一括試行で同じ設定を1,000回まとめて回した結果を見るためのものです。
先に、この検証室でいちばん大事な事実を書いておきます。
理由は単純です。1回のゲームの期待収支は「そのゲームの賭け金 ×(−控除率)」です。 そして賭け金は過去の結果だけを見て決めるので、これから出る目とは無関係に決まります。 だから期待値を足し合わせると、上の式になります。 ——この式のどこにも「賭け方」は登場しません。 賭け金の決め方をどう変えても、期待される損失は「賭けた総額」と「控除率」だけで決まります。
ベッティングシステムにできるのは、損益のばらつきの形を変えることだけです。 マーチンゲール法は「小さくたくさん勝って、たまに全部失う」形に、 パーレー法は「小さくたくさん負けて、たまに大きく勝つ」形に変えます。 平均は、どちらも同じだけマイナスです。
| システム | 賭け金の決め方 | 増え方 | 向くゲーム | 破綻の形 |
|---|---|---|---|---|
| マーチンゲール法 | 負けたら2倍/勝ったらリセット | 指数(2倍) | 1:1(赤黒など) | 数回の連敗で即・続行不能 |
| モンテカルロ法 | 数列の両端の和/勝ちで両端を消す | ゆるやかに加速 | 1:1・2:1 | 数列が伸び続けて賭け金が膨張 |
| ダランベール法 | 負けたら+1単位/勝ったら−1単位 | 線形 | 1:1(赤黒など) | じわじわ減って戻らない |
| パーレー法 | 勝ったら2倍/負けたらリセット | 指数(勝った時だけ) | 1:1(赤黒など) | 破綻はしにくいが着実に減る |
| ココモ法 | 直前2回の賭け金の和 | フィボナッチ(約1.618倍) | 2:1(ダズンなど) | 勝率が低く連敗が長い |
下のシミュレーターは5種類すべてを切り替えられます。「公正なコイン(控除率0%)」も選べるので、 負けの原因がシステムなのか控除率なのかを切り分けられます。
初期資金・ベース賭け金・テーブル上限・最大ゲーム数を決めて実行します。 1回プレイは1ゲームずつ手で進みます(自動再生は任意で、結果が勝手に流れることはありません)。 一括試行は同じ設定を最大5,000セッション回し、破綻率・収支の分布・期待値との一致を表示します。 乱数シードを入れれば、同じ結果を何度でも再現できます。
以下の数字は、シミュレーターに乱数シード 20260902/セッション数 5,000 を入れれば、 そのままあなたの画面で再現できます(それ以外は下に書いた設定のとおり)。
マーチンゲール法・初期資金100,000円・ベース1,000円・テーブル上限20,000円・最大200ゲーム。 ここで「利益目標に届いたらやめる」に 5000 を入れて一括試行します。
| プラスで終わったセッション | 83.6%(4,182 / 5,000) |
| 収支の中央値 | +5,000 円 |
| 破綻したセッション | 16.4%(818 件) |
| 1セッションの平均収支 | −576 円 |
| 5,000セッションの合計収支 | −288万円 |
8割以上のセッションが「+5,000円で勝ち逃げ」に成功しています。体感では明らかに勝てている手法です。 それでも合計はマイナス。残りの16.4%が1回あたり最大31,000円を失っているからです。 勝率と収支は別物——これがこのシミュレーターで最初に確かめてほしいことです。
実験1とまったく同じ設定のまま、ゲームだけ「公正なコイン(控除率0%)」に変えて一括試行します。
| プラスで終わったセッション | 85.7% |
| 1セッションの平均収支 | +111 円(理論値 0 円) |
| 破綻したセッション | 14.3%(716 件) |
平均収支がほぼ0になりました。負ける原因はベッティングシステムではなく控除率です。 そのうえで破綻率は0になりません。資金とテーブル上限が有限である限り、 賭け金を増やし続ける方法はいつか必ず止まります。控除率0%でも「破綻」は消えない——ここが2つ目の要点です。
実験1から「利益目標」を 0(無効)に戻して一括試行します。 プラス終了は31.0%まで落ち、破綻率は98.0%、収支の中央値は−13,000円になります。 勝ち逃げのルールが消えただけで、見え方が正反対になりました。 やめ時のルールは分布の形を変えるだけで、期待値には触れていません——最初の式のとおりです。
「資金が無限で、賭け金に上限がなく、時間も無限にある」ならマーチンゲール法は確率1で+1単位を得ます。 しかしこれは3つとも成り立たない仮定です。有限の資金でこの戦略を続けると、破産する確率は1に近づきます。 「理論上は負けない」の「理論」は、現実のテーブルには存在しません。
ルーレットにもコイントスにも記憶はありません。10連敗した直後の1回が赤になる確率は、 1回目とまったく同じ 18/37 です。これはギャンブラーの誤謬と呼ばれる、最も一般的な確率の錯覚です。 ダランベール法やモンテカルロ法の「負けた分を取り返す」という発想は、この誤謬の上に立っています。
ベット上限はもともとどのテーブルにも設定されているもので、特定の賭け方を狙って作られたものではありません。 そして上限があるだけで、この方法は成立しなくなります。禁止する必要がない、というのが実際のところです。
カジノのゲームは配当が固定ですが、競馬・競艇はオッズが毎回変わります。 そしてマーチンゲール法やココモ法の性質は、このオッズだけで決まります。 オッズ2.0倍未満では「負けたら倍」が損失を取り返せないこと、 当たりやすい馬券ほど賭け金が速く増えることを、同じ形のシミュレーターで確かめられます。
当サイトは書籍・学習コンテンツのみを紹介します。オンラインカジノ等の賭博サービスへの誘導は一切行いません。
ここで扱っているのは「確率と期待値」の話なので、その背景を扱った定番書を挙げます。
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