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マーチンゲール法 競馬 シミュレーション
— 複勝・ワイドで倍賭けをするとどうなるか

このページについて:賭け方の数学的な性質を検証するための学習ツールです。 現金・賭け金・賞金・ポイント等を一切扱わず、換金・出金の仕組みもありません。 表示される「円」はすべてシミュレーション上の数値です。 勝てる買い方の紹介でも、馬券の購入を勧めるものでもありません。オンラインカジノ等の紹介・誘導も行いません。
マーチンゲール法を競馬で使う話は「負けたら賭け金を倍にする」という形で語られます。 これはオッズ2.0倍を前提にした計算で、競馬の多くの買い目では前提が成り立ちません。 このページでは、①倍賭けが取り返せなくなる条件 ②正しく計算した場合に必要な資金 ③それでも期待値が動かない理由 の3つを、数式と実測で確認します。

まず前提:競馬の控除率は20〜27.5%

JRA公式が公開している券種ごとの設定払戻率(平成26年6月7日以降)です。 控除率=100% − 払戻率。ヨーロピアンルーレットの控除率2.70%と比べると、7〜10倍不利な数字です。

券種払戻率控除率
単勝・複勝80.00%20.00%
枠連・馬連・ワイド77.50%22.50%
馬単・3連複75.00%25.00%
3連単72.50%27.50%
WIN570.00%30.00%

出典:JRA公式「馬券のルール」内の「勝馬投票法ごとの払戻率について」。 競馬法は払戻率を「売得金の百分の七十以上、農林水産大臣が定める率以下の範囲内で日本中央競馬会が定める率」と規定しています。

問題1:オッズ2.0倍未満では、倍にしても取り返せない

基準額 b、オッズ o 倍で n連敗のあとに的中したときの純益は、単純な倍賭けだとこうなります。

純益 = b ×(2n(o − 2)+ 1) o = 2.0 のときだけ、n によらず必ず +b。o < 2.0 だと n が増えるほどマイナスが膨らむ
オッズ連敗なし1連敗後2連敗後3連敗後4連敗後6連敗後
1.1倍(人気馬の複勝)+100−800−2,600−6,200−13,400−56,600
1.3倍+300−400−1,800−4,600−10,200−43,800
1.5倍(複勝)+500±0−1,000−3,000−7,000−31,000
1.8倍+800+600+200−600−2,200−11,800
2.0倍+1,000+1,000+1,000+1,000+1,000+1,000
3.0倍(単勝)+2,000+3,000+5,000+9,000+17,000+65,000
※ 表は横にスクロールできます。基準額1,000円。
複勝1.5倍で倍賭けをすると、1連敗後に的中しても純益はゼロ、2連敗後の的中で1,000円のマイナスです。
「1回当たれば全部取り返せる」というマーチンゲール法の売り文句は、オッズが2.0倍を下回った時点で崩れています。 複勝やワイドの人気サイドを買う設計なら、この式に必ず当たります。

問題2:正しく計算すると、当たりやすい馬券ほど賭け金が速く増える

では「倍」ではなく本当に取り返せる額を計算するとどうなるか。 累計損失 L を的中1回で回収して基準額 b の利益を残すには、こうなります。

次に賭ける額 =(L + b)÷(o − 1) / 1回ごとの増え方 = o ÷(o − 1)

o が小さいほど、この増え方は大きくなります。 「当たりやすい馬券を選べば安全」という直感の、ちょうど逆です。

オッズ増え方的中率※5連敗目の賭け金5連敗までの累計投入8連敗目の賭け金
1.2倍6.00倍66.7%6,609,6007,930,5001,427,673,600
1.5倍3.00倍53.3%162,000242,0004,374,000
2.0倍2.00倍40.0%16,00031,000128,000
3.0倍1.50倍26.7%2,7007,0009,000
7.5倍1.15倍10.7%4001,400600
15倍1.07倍5.3%100500200
※ 表は横にスクロールできます。基準額1,000円・100円単位に切り上げ。
※的中率は「単勝の平均的な購入者」の値(払戻率80% ÷ オッズ)。予想が平均より上手ければこれより高くなります。

連敗はどれくらい起きるのか

上の的中率を使って、n連敗が起きる確率を出したものです。

買い方3連敗5連敗8連敗10連敗20連敗
複勝1.5倍(的中53.3%)10.16%2.21%0.22%0.05%0.00%
単勝3.0倍(的中26.7%)39.44%21.21%8.36%4.50%0.20%
単勝7.5倍(的中10.7%)71.29%56.89%40.56%32.37%10.48%

この2つの表を並べて読むのがポイントです。 複勝1.5倍の5連敗は2.21%——45回に1回です。そのとき必要な賭け金は162,000円。 「めったに起きない」ではなく「45回に1回、16万円を張れなければ終わる」というのが実際の姿です。 1日12レース買うなら4日で48レース。この長さなら、平均して1回はここに来る計算になります。

問題3:それでも期待値は1円も動いていない

ここまでは「破綻の仕方」の話でした。もっと重要なのは、どんな増やし方をしても期待値は変わらないことです。

E[トータルの収支] = −(控除率)×(賭けた総額) 右辺に「賭け金の決め方」は出てこない。だから資金管理では期待値を動かせない

むしろマーチンゲール法は総ベット額を増やす方向に働くので、 同じレース数なら定額より期待損失は大きくなります。 下のシミュレーターで、資金管理の方法だけを切り替えて「平均の総ベット額」を比べてみてください。

実測:複勝1.5倍で3つの方法を回してみる

下のシミュレーターで実際に回した結果です。券種=JRA複勝/オッズ1.5倍(的中率53.33%)/初期資金10万円/ 基準1,000円/1レース上限50,000円/100レース/5,000セッション/乱数シード 20260902。 同じ数字を入れれば再現できます。

賭け方平均の総ベット額平均収支(実測)理論値
−20%×総ベット額
プラス率続行不能最悪
定額(毎回1,000円)100,000−19,991−20,0000.4%0.0%−49,000
単純な倍賭け209,796−42,808−41,9592.9%44.2%−100,000
損失回収型(正しい計算)85,702−17,079−17,1405.6%99.8%−26,000
※ 表は横にスクロールできます。金額はすべて仮想の円。

損失回収型の損失が一番小さいのは、上手いからではありません。 賭け金が1回ごとに3倍(2,000 → 6,000 → 18,000 → 54,000)になるので、 3連敗した時点で4回目に必要な54,000円が上限50,000円を超えて止まるからです。 3連敗は10.16%=10回に1回起きるので、100レースも回せばほぼ確実にここに来ます。 だから「99.8%が続行不能」なのに「平均損失は最小」という、いっぷう変わった結果になります。 早く止まる=賭けた総額が小さい=期待損失も小さい、というだけの話で、勝ちに近づいたわけではありません。

逆に単純な倍賭けは、上限50,000円まで賭け金を積み上げられるぶん総ベット額が2倍以上になり、平均損失も2倍以上になります。 最悪ケースでは初期資金10万円が全部消えています。

どの行も、平均収支(実測)が「−控除率20% × 総ベット額」とほぼ一致しています。 賭け方が変えているのは総ベット額と損益のばらつきだけで、1円あたりの期待値は動いていません。

マーチンゲール法(競馬)シミュレーター

1レースずつは手で進みます(自動再生は任意)。一括試行は最大5,000セッションをまとめて回します。 「単純な倍賭け」と「損失回収型(正しい計算)」を切り替えると、上で説明した違いをそのまま観察できます。

よくある質問

複勝なら的中率が高いから、マーチンゲール法と相性がいいのでは?

逆です。的中率が高い=オッズが低いということなので、賭け金の増え方が急になります(1.5倍なら1回ごとに3倍)。 連敗の確率は下がりますが、起きたときに必要な金額が跳ね上がるので、差し引きで楽にはなりません。 上の2つの表を突き合わせると、そこが数字で見えます。

ワイドや馬連ならどうですか

払戻率が77.5%(控除率22.5%)になるぶん、単勝・複勝より1回あたりの期待損失は大きくなります。 オッズは高くなるので賭け金の増え方は緩やかになりますが、期待値の式は同じです。 シミュレーターの券種を「JRA 馬連・ワイド・枠連」にして、オッズを実際に買う水準に合わせて確かめてください。

「利益が出たらやめる」ルールを決めれば勝てますか

1セッションあたりの勝率は上がります。ただし合計収支は改善しません。 やめ時を決めるのは「大きな勝ちを取りこぼして、たまの大負けだけを残す」動きなので、 プラスで終わる割合が上がるかわりに、負けたときの額が大きくなるだけです。 シミュレーターの「利益目標に届いたらやめる」に金額を入れて、一括試行の合計収支を見比べてください。

連敗が続いたら、次は当たりやすいのでは?

いいえ。レースごとに出走馬も条件も違いますし、前のレースの結果は次のレースの確率を変えません (ギャンブラーの誤謬)。「そろそろ来る」という感覚は、マーチンゲール法が有効に見える理由の大半を占めています。