JRA公式が公開している券種ごとの設定払戻率(平成26年6月7日以降)です。 控除率=100% − 払戻率。ヨーロピアンルーレットの控除率2.70%と比べると、7〜10倍不利な数字です。
| 券種 | 払戻率 | 控除率 |
|---|---|---|
| 単勝・複勝 | 80.00% | 20.00% |
| 枠連・馬連・ワイド | 77.50% | 22.50% |
| 馬単・3連複 | 75.00% | 25.00% |
| 3連単 | 72.50% | 27.50% |
| WIN5 | 70.00% | 30.00% |
出典:JRA公式「馬券のルール」内の「勝馬投票法ごとの払戻率について」。 競馬法は払戻率を「売得金の百分の七十以上、農林水産大臣が定める率以下の範囲内で日本中央競馬会が定める率」と規定しています。
基準額 b、オッズ o 倍で n連敗のあとに的中したときの純益は、単純な倍賭けだとこうなります。
| オッズ | 連敗なし | 1連敗後 | 2連敗後 | 3連敗後 | 4連敗後 | 6連敗後 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.1倍(人気馬の複勝) | +100 | −800 | −2,600 | −6,200 | −13,400 | −56,600 |
| 1.3倍 | +300 | −400 | −1,800 | −4,600 | −10,200 | −43,800 |
| 1.5倍(複勝) | +500 | ±0 | −1,000 | −3,000 | −7,000 | −31,000 |
| 1.8倍 | +800 | +600 | +200 | −600 | −2,200 | −11,800 |
| 2.0倍 | +1,000 | +1,000 | +1,000 | +1,000 | +1,000 | +1,000 |
| 3.0倍(単勝) | +2,000 | +3,000 | +5,000 | +9,000 | +17,000 | +65,000 |
では「倍」ではなく本当に取り返せる額を計算するとどうなるか。
累計損失 L を的中1回で回収して基準額 b の利益を残すには、こうなります。
o が小さいほど、この増え方は大きくなります。 「当たりやすい馬券を選べば安全」という直感の、ちょうど逆です。
| オッズ | 増え方 | 的中率※ | 5連敗目の賭け金 | 5連敗までの累計投入 | 8連敗目の賭け金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.2倍 | 6.00倍 | 66.7% | 6,609,600 | 7,930,500 | 1,427,673,600 |
| 1.5倍 | 3.00倍 | 53.3% | 162,000 | 242,000 | 4,374,000 |
| 2.0倍 | 2.00倍 | 40.0% | 16,000 | 31,000 | 128,000 |
| 3.0倍 | 1.50倍 | 26.7% | 2,700 | 7,000 | 9,000 |
| 7.5倍 | 1.15倍 | 10.7% | 400 | 1,400 | 600 |
| 15倍 | 1.07倍 | 5.3% | 100 | 500 | 200 |
上の的中率を使って、n連敗が起きる確率を出したものです。
| 買い方 | 3連敗 | 5連敗 | 8連敗 | 10連敗 | 20連敗 |
|---|---|---|---|---|---|
| 複勝1.5倍(的中53.3%) | 10.16% | 2.21% | 0.22% | 0.05% | 0.00% |
| 単勝3.0倍(的中26.7%) | 39.44% | 21.21% | 8.36% | 4.50% | 0.20% |
| 単勝7.5倍(的中10.7%) | 71.29% | 56.89% | 40.56% | 32.37% | 10.48% |
この2つの表を並べて読むのがポイントです。 複勝1.5倍の5連敗は2.21%——45回に1回です。そのとき必要な賭け金は162,000円。 「めったに起きない」ではなく「45回に1回、16万円を張れなければ終わる」というのが実際の姿です。 1日12レース買うなら4日で48レース。この長さなら、平均して1回はここに来る計算になります。
ここまでは「破綻の仕方」の話でした。もっと重要なのは、どんな増やし方をしても期待値は変わらないことです。
むしろマーチンゲール法は総ベット額を増やす方向に働くので、 同じレース数なら定額より期待損失は大きくなります。 下のシミュレーターで、資金管理の方法だけを切り替えて「平均の総ベット額」を比べてみてください。
下のシミュレーターで実際に回した結果です。券種=JRA複勝/オッズ1.5倍(的中率53.33%)/初期資金10万円/
基準1,000円/1レース上限50,000円/100レース/5,000セッション/乱数シード 20260902。
同じ数字を入れれば再現できます。
| 賭け方 | 平均の総ベット額 | 平均収支(実測) | 理論値 −20%×総ベット額 | プラス率 | 続行不能 | 最悪 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 定額(毎回1,000円) | 100,000 | −19,991 | −20,000 | 0.4% | 0.0% | −49,000 |
| 単純な倍賭け | 209,796 | −42,808 | −41,959 | 2.9% | 44.2% | −100,000 |
| 損失回収型(正しい計算) | 85,702 | −17,079 | −17,140 | 5.6% | 99.8% | −26,000 |
損失回収型の損失が一番小さいのは、上手いからではありません。 賭け金が1回ごとに3倍(2,000 → 6,000 → 18,000 → 54,000)になるので、 3連敗した時点で4回目に必要な54,000円が上限50,000円を超えて止まるからです。 3連敗は10.16%=10回に1回起きるので、100レースも回せばほぼ確実にここに来ます。 だから「99.8%が続行不能」なのに「平均損失は最小」という、いっぷう変わった結果になります。 早く止まる=賭けた総額が小さい=期待損失も小さい、というだけの話で、勝ちに近づいたわけではありません。
逆に単純な倍賭けは、上限50,000円まで賭け金を積み上げられるぶん総ベット額が2倍以上になり、平均損失も2倍以上になります。 最悪ケースでは初期資金10万円が全部消えています。
1レースずつは手で進みます(自動再生は任意)。一括試行は最大5,000セッションをまとめて回します。 「単純な倍賭け」と「損失回収型(正しい計算)」を切り替えると、上で説明した違いをそのまま観察できます。
逆です。的中率が高い=オッズが低いということなので、賭け金の増え方が急になります(1.5倍なら1回ごとに3倍)。 連敗の確率は下がりますが、起きたときに必要な金額が跳ね上がるので、差し引きで楽にはなりません。 上の2つの表を突き合わせると、そこが数字で見えます。
払戻率が77.5%(控除率22.5%)になるぶん、単勝・複勝より1回あたりの期待損失は大きくなります。 オッズは高くなるので賭け金の増え方は緩やかになりますが、期待値の式は同じです。 シミュレーターの券種を「JRA 馬連・ワイド・枠連」にして、オッズを実際に買う水準に合わせて確かめてください。
1セッションあたりの勝率は上がります。ただし合計収支は改善しません。 やめ時を決めるのは「大きな勝ちを取りこぼして、たまの大負けだけを残す」動きなので、 プラスで終わる割合が上がるかわりに、負けたときの額が大きくなるだけです。 シミュレーターの「利益目標に届いたらやめる」に金額を入れて、一括試行の合計収支を見比べてください。
いいえ。レースごとに出走馬も条件も違いますし、前のレースの結果は次のレースの確率を変えません (ギャンブラーの誤謬)。「そろそろ来る」という感覚は、マーチンゲール法が有効に見える理由の大半を占めています。